人形町のtagboatギャラリーにて開催していた個展「Awakening」(2025年5月29日~6月17日)。
本展出品作に関連して、現代アーティストのayaka nakamuraさんに展示会場にてお話を伺いました!
インタビュー:隅田
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ayaka nakamura |
– ayakaさんはこちらのギャラリーでの個展は2回目になりますよね。今回のタイトル「Awakening」に込めた意味はなんでしょうか?
「Awakening」は「目覚め」という意味なんですが、新緑や5月など、いまの季節を想起させる言葉だと思いまして。
– ここでの前回の個展もちょうど似たような時期でしたね。
そうですね!作品には空気感、季節感のようなものが備わっていると思うのですが、それとリアルの季節がマッチすることは結構大切だなと考えています。
– 今回出品している作品について、前回の個展から変化したところはありますか?
個展は本当に毎回挑戦なんですよね…。いつも青をメインの色としつつ、ほかの色とうまく組み合わせることを考えているんですが、今回はそこのコンビネーションがうまくいったと思っています。特に、ベースの方に入れたビビッドな色をいかに表面に出すかを意識していました。
– 例えばどの作品にそうした工夫がみられるでしょうか?
どの作品でも意識しているのですが、例えばこの《明日への息吹》という作品は、絵の具の層の奥からうまい具合に黄色をのぞかせられたなと思っているものでして。
ayaka nakamura「Breath of Eternity 明日への息吹」
– 技法的な難しさはどんなところにありますか?
色の具合を調整するにはいろいろ考慮しないといけないんですよね。絵の具の濃度を調整することはもちろん、気温と湿度によっても仕上がりは左右されますし。そのうえで全体を見て絵の具をシアーにかさねる部分と、べったりと乗せる部分のバランスを調整したり。
– 様々なもののバランスを取りながら描き進めて、このような複雑な画面が完成するのですね。とても大変だろうと想像します…。
そうですね! あとは綿密に計算するところと、自然にまかせるところのバランスも考えています。
– 自然にまかせるところというのは?
描いていて「この部分すごくいい!」というのができたりするんですが、乾く過程で勝手にイメージが変わっていっちゃうことが多くて。制作から少し離れて戻ってくると全然違う感じになっていて「ああ~」となることも。
– 偶然性との闘いでもあるんですね。ところで《明日への息吹》を見ていて気になったのですが、絵の具がシワシワになっている部分が面白いなと。
この部分ですね。じつはアクリル絵の具って、乾いていないときに水を足すとシワシワになるんですよ。
– 初耳です!絵の具の特性を生かしたテクスチャなんですね。ayakaさんの作品は近くから観察するのも楽しいです。
私自身、自分の作品は遠くでも近くでも、どの角度からも鑑賞してほしいなと思っています!こんな感じで実際に目の前に立って、近づいてみたり遠のいてみたりして、みなさんそれぞれ自分の好きな間合いを見つけてほしいなと(笑) ネットでイメージが見れる今だからこそ、自分の目で見て発見がある作品にしたいですよね。
– ちなみに今回2024年制作の映像作品も展示されていますが、ayakaさんは元々映像からアーティストとしてキャリアをスタートされているんですよね。
はい。映像作品を作っていてふと思ったんですが、こんなに頑張ってつくったのに、データは簡単に消去できてしまうんだよなと。インターネットの広まりに反して、実際にあるものこそが大事だと思う気持ちが強くなっていきました。それで、モノとして残る油彩作品の方に惹かれていったんですよね。
– さきほども自分の目で見て発見がある作品にしたいとおっしゃっていましたが、実物へのこだわりという点でつながっているように思えます。
たしかにそうかもしれないですね!
– 技法面以外で制作で大変なことはありますか?
抽象画は終わりがいつ来るかわからないので、締め切りに追われてストレスがたまりますね(笑)
でもずっと描いていないと落ち着かないたちで、例えば「最近2日くらい描いていないな」と思うと気持ちがモヤモヤしてくるんです。
– エネルギッシュですね!お客さんともよくお話されていらっしゃいますし。これまで聞いた作品の感想の中で印象深いものはありますか?
以前「絵があると寂しくない」と言ってくださった方がいて。現代人って簡単につながれる割には孤独を感じている人が多いですよね。その原因って自分を知らないからなんじゃないかと思ってて。
– 自分を知らないというのは、自分に注意が向いていないということでしょうか。
そうですね。それで、絵を見るというのは自分を見つめなおす行為とつながると思うんです。自分の気持ちを知る、自分の時間をつくることが絵にはできる。
– 鑑賞の時間は自分を大切にする時間ということですね。セルフセラピーにも通じる考え方な気がします…。最後になりますが、これまで2回ここで個展を開いてみて、あらためてタグボートの空間についてどう思われますか?
とてもいい空間だと思います!天井が高くて、一階で広々してますし。個人的にギャラリー全般入りづらい雰囲気があって苦手なのですが…(笑)。でもタグボートはフォーマルさとカジュアルさの両方備えているのがいいですよね。大きな窓があって、そこから中をのぞいて興味をもってくれる人もいる。地元の人がふらっと立ち寄ってくれるような、そんな雰囲気もいい。さっきも「なんか展示変わったね」と話しながら通り過ぎていく人がいましたし。
– 大変有難いことに、たまたまふらりと立ち寄ってくださる方も多いんですよね。入りやすい雰囲気のギャラリーというのは確かにあまりないかもしれません…。
それではayakaさん、制作の裏側について様々なお話をありがとうございました。今後のご活躍も楽しみにしております!
2025年5月29日(木) ~ 6月17日(火)
営業時間:11:00-19:00 休廊:日月祝
※初日の5月29日(木)は17:00オープンとなります。
※オープニングレセプション:5月29日(木)18:00-20:00
※5月30日(金)はセミナー開催のため、18:00閉場となります。
入場無料・予約不要
会場:tagboat 〒103-0006 東京都中央区日本橋富沢町7-1 ザ・パークレックス人形町 1F